~この世のコタエ~② 中国古典「荘子」
「混沌王の死」
混沌の中から天と地が分かれた
天の王様と、大地の王様ができた
このふたりは、何でも早くやりたがる、せっかちだった。
天の王様はあわてて星をつくり
大知の王様は、せっかちに、地上にあれこれつくった。
ふたりは時々、もとの住まいの「混沌」の王様を訪ねていった。
混沌王は、天の王と大地の王を
いつも優しくもてなしてくれた。
ある時、天の王と大地の王は、
いつも混沌王にもてなしてもらってばかりで、
すまない気がする。
ひとつお礼に何かしようじゃないかと、話し合った。
「そうだなあ、どうしてあげたらいいだろう?」
「そういえば、人間は、七つの穴を持っている。
目と鼻と耳と口だ。
それらを使ってエンジョイしている。
ところが混沌王には、目も鼻も何もない。
ひとつ、あの方にも穴を開けてあげようじゃないか。
そうしたら、きっと喜ぶに違いないぞ」
それは良い考えだと言い合って、
ふたりの王はさっそく取りかかった。
最初の日に、まずひとつ
次の日に、もうひとつ
というふうに、
七日かかって、穴を開けていった。
人間と同じだけの穴を開け終わって
これできっと、喜んでいるに違いないと訪ねて行ったら
混沌王は死んでいた。